賃料増減額交渉の領域は、弊社が最も力を入れて取り組んでいる部分ですが、他の分野とは異なる特有の構造が有り、これを理解していないと有利な交渉が行えません。
ですので、まずはその構造についての解説から始めさせていただきたいと思います。
賃料増減額交渉の手続きと構造
賃料増減額交渉においては、一方当事者から賃料改定の申し出を行い、民民レベルでの交渉を行う。それでまらない場合はまず調停に付して(調停前置主義)、この中でも折り合いが付かない場合に訴訟に入る、という手続きになります。
民民間の交渉は、基本的に「現行賃料」と「新規賃料」の差異のなかでどこを取るかが焦点になり、交渉時点における貸主・借主の力関係の中で、合意点を探ることになります。
これが調停・訴訟となると、『継続賃料』の領域になることで、私的自治の原則に基づく契約及び合意の拘束性・公租公課の推移・元本価格の推移・経済指標の推移等のファクターが出てきます。
このように、民民交渉段階と、調停・訴訟の段階で判断基準が異なっている点が、賃料増減額交渉の特殊な点です。
この中で、「現行賃料」と「新規賃料」の差異があるからと安易に強行な賃料交渉を行うと、調停・訴訟で痛い目に合ってしまう事態が生じ得ます。
また、安易な増額・減額合意をしてしまうと、それが実績となり次回の改定を拘束しますので、微増・微減の改定に留まるならば次回交渉に持ち越す方が有利な場合も出てきます。
ですので、賃料増減額交渉を行うに当たっては、「現行賃料」と「新規賃料」の差異だけではなく、
- 契約及び賃料改定の経緯
- 元本価格や公租公課の推移
- 一般経済指標の推移
等を十分にした上で、「最終的に訴訟になった場合にはどのあたりで落ち着くか」を把握し、「訴訟での落ち着きどころを前提にして、どのレベルまで踏み込んで、どこで折り合いをつけるか」についても十分にシミュレーションを行った上でトータルな戦略を練ることが必要となります。
不動産鑑定評価基準と賃料交渉の関係
このように複雑な賃料増減額交渉ですが、鑑定評価基準の中で賃料増減額交渉の際の鑑定評価として想定されているのは『継続賃料』の鑑定書になります。
『継続賃料』の鑑定書は、賃料増減額訴訟の中で、裁判所が判断するであろう適正賃料(『相当賃料』といいます)を求めるもので、言い換えると、『上記の交渉の結果としての最終的な落ち着きどころ』を示すものです。
交渉というのは、満額回答は望みがたく、両当事者の主張の範囲内で折り合いをつけていくものになりますので、交渉の当初から『継続賃料の鑑定書』を出してしまう事で、主張の幅を狭めてしまったり、逆に落ち着くべきところで落ち着かなくなるという事態が生じてしまうことが有ります。
賃料増減額交渉に関する弊社の取り組み
ご相談に対する対応
この中で弊社では、賃料増減額交渉のご相談をいただいた場合には、安易に継続賃料の鑑定書を出すのではなく、賃貸借契約の経緯やご依頼者様の意向をお聞きした上で、
- 新規賃料の水準
- 今回交渉時に優位に働くファクターと不利に働くファクター
- 想定される着地点
を提示させていただき、費用対効果も含めた本件改定に最も有利と思われるなシナリオをご提案させていただいております。
また、賃料改定交渉においては、依頼者様がご自身で行うのではなく弁護士の先生が改定交渉の中心的役割を担う場合が一般的で、弁護士の先生毎に得意な交渉シナリオをお持ちですので、依頼者様と弁護士の先生を交えた協議を十分に行ったうえで、弊社で行いうる最善の提案をさせていただいております。
尚、賃料増減額の分野はニッチな分野ですので、当該分野の経験が豊富な弁護士の先生が間に入ることで、交渉が優位に進む部分も多々ございます。
弊社にお声がけいただけましたら、当該分野に強い弁護士を紹介させていただき、当該弁護士様とチームを組んで増減額交渉の対応を行うことも可能です。
費用について
費用に関しては、各種鑑定の中で最も費用対効果が問題になる領域ですので、オーダーメイド的に設定させていただきますが、個別契約に対する賃料増減額交渉を前提にしますと、
- 事前電話相談は無料
- 面談による詳細な相談は、税込み5万5千円(事前検討費用4万円+1時間1万円+税)
- 概算的な新規賃料水準・継続賃料水準の導出は税込み44万円(事前面談を行って相談料をお支払いただいている場合、当該金額は差し引かせていただきます)。
- 初手としての意見書を作成する場合は税込み66万円(事前に概算的な賃料水準を出させていただいている場合は、当該金額を差し引かせていただきます)。
- 訴訟を前提とするフルスペックの鑑定書を作成する場合は税込み165万円(事前に水準調査・意見書を発注いただいた場合は、その金額を差し引かせていただきます)。
を目安としていただければと存じます。
なお、上記でも書かせていただいた通り、賃料増減額請求を起こす側の場合、調停・訴訟に持ち込むことは必ずしも有利な結果にならないことも多いです。この中で、出来るだけ民民の交渉・法的手続きを取るにしても調停までで問題を解決させるのがベストですしそれを目指したアドバイスをさせていただいております。
ですので、訴訟前提のフルスペックの鑑定書が必要になるのは、
- すでに調停・訴訟にかかっている場合
- どうしても判決という形で決着をつけたい場合(大型物件や、企業様所有の不動産など)
に限定されると考えていただいて結構かと存じます。
近年の評価実績(直近5件)
- 大阪市北区事務所ビルの地代増額(鑑定書)
- 大阪市北区事務所ビルの賃料交渉(テナント側へのコンサルティング業務)
- 大阪市中央区の店舗ビル敷地にかかる地代増額(訴訟にあたっての方針策定等)
- 茨木市内物流倉庫の地代増額(鑑定書)
- 大阪市区宅医療系ビル敷地の継続賃料(鑑定書)
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